我々日本人にとっては当たり前のことですが、日本語で様々な文献を読むことができます。専門性の高い最先端の技術に関しては英語でしかアクセスできない可能性がありますが、暫くすると日本語でもアクセスができるようになります。また、こういった文献だけに限らず、漫画や小説などの娯楽に関しても日本語で楽しめるものが星の数ほどあり、更には有名な海外小説もだいたい日本語に翻訳されていたりするものです。
インドに来て書籍コンテンツの少なさに関して思ったこと
まず、インドと言っても広く・数多くの言語があるため、私が一番慣れ親しんだヒンディー語圏の話をしたいと思います。
ヒンディー語と言えば、インドで活用されている共用語で(英語に次ぐ?)最大の話者がいる言語です。また、ボリウッド映画やポエムでもよく使われるため、言語としての普及率は高く、この言語が100年後消滅しているような未来は想像しずらい言語です。
本屋に行くと、ヒンディー語の文献の少なさに驚愕します。大人向けのハウツー本、ビジネス本、テクノロジー系の本が英語になってしまうのは、仕方ないかなと思うのですが、子供向けの絵本・児童書籍なども英語のものが多く、ヒンディー語のものも置いていない訳ではありませんが申し訳程度にしか置いてありません。
この現象に対しての私の見解(正解かは置いておいて)は以下です。
1.神話やお経の継承も口伝がベースであったため、書籍として伝える文化に重きを置いていない。
2.英語が話せることで将来いい仕事に就くことができるため、親は小さい頃から英語教育に熱心。ヒンディー語は最低限話せて読み書きできればいいから、あとは英語を勉強してほしい。
3.多言語国家のインドではわざわざ各ローカル言語で書籍を印刷するよりも、英語のバージョンのみを販売したほうがコストが少なく済む。
4.本を読む層と、ヒンディー語しか読み書きができない層は違う。
日本人からすると、「母国語のコンテンツがないなんて!?」とにわかに信じられないような事ですが、(ちゃんとした統計がないのが心苦しいですが)X(Twitter)など見ると、自国語コンテンツの少なさはインドに限らず他の国でもある現象のようです。
更に、インドは映画に関しては自国語コンテンツが確立しており、書籍にこだわらなければ自国語コンテンツへのアクセスは難しくありません。そういった意味合いでは、書籍も映画もアメリカやイギリスの舶来品しかないような更に過酷な(?)環境の国もあるのかもしれません。
母国語で書籍に触れることの大切さ
母国語で書籍に触れることで、その言語を正確かつ効果的に習得することをサポートされます。
書籍は通常、言語の正しい文法に基づいて書かれています。そのため、読書を通じて自然と正しい文法構造を学ぶことができます。文学作品などでは、複雑な文構造や文法的な特性が使用されることが多いため、これらの理解が深まることは言語能力全般の向上につながります。
書籍にはさまざまな感情や状況が描かれており、それらを表現するための多様な方法が用いられます。これにより、感情や思考を言葉にする際の表現力が養われます。特に文学作品や詩では、比喩や象徴などを通じて感情を表現する技術が学べるため、自己表現の幅が広がります。
母国語で文献が読めることのメリット
1. 感情的な共感と理解が深まる
母語で娯楽を楽しむことで、感情的な共感や理解がより深まります。物語の中で登場人物が使う言葉や表現は、私たちが日常的に使っている言葉と同じです。そのため、彼らの感情や状況が直感的に理解しやすくなります。微妙なニュアンスや文化的背景が共有されているため、母語での体験は、他の言語では得られない深い共感を生み出します。
2. 文化的アイデンティティの強化
母語で提供されるコンテンツは、その国や地域の文化を反映しています。日本の漫画やアニメ、小説には、歴史や伝統、現代の社会問題、さらには独自のユーモアや表現が豊かに含まれています。これらを母語で楽しむことで、自分自身の文化的アイデンティティが強化されます。また、自国の文化に対する誇りや理解が深まり、それがさらに自己のアイデンティティを確立する要因となるのです。
3. 教養と知識の向上
母語での娯楽は、単なるエンターテイメントにとどまらず、教養や知識の向上にも寄与します。例えば、歴史をテーマにした小説や漫画を母語で読むことで、その時代背景や社会状況に対する理解が深まります。また、複雑なテーマや概念も、母語であればよりスムーズに理解できるため、学びの効果が高まります。
4. 精神的なリラックス効果
母語は、私たちにとって最も自然で心地よいコミュニケーション手段です。そのため、母語での娯楽は、他の言語を介したものよりもリラックス効果が高いと言えます。日常のストレスから解放され、心地よく過ごせる時間を得るためには、母語での娯楽が最適です。特に、リズムや音の響きが馴染んでいる母語での体験は、心の安らぎを与えてくれるでしょう。
5. 言語の豊かさを実感
母語での娯楽を楽しむことで、言語の豊かさを再認識することができます。特に日本語は、多様な表現や語彙が豊富で、その微細なニュアンスや感覚を活かした作品が数多くあります。これらの作品を母語で楽しむことで、自分の言語の美しさや可能性を実感することができるのです。
母国語で書籍を読むことは文化を守ることと同じ
何を大げさな!と思われるかもしれませんが、言語は使う人がいて初めて成り立つものです。母国語を使って母国語で表現をして、そのコンテンツを受け取る人がいなくなったら、その言語は衰えてって、最終的には消滅してしまうかもしれません。
特にSNSの流行を見ていると強く思うことですが、口語の移り変わりは非常に早く、もともと用法にない意味でその言葉を使用したり、新しい単語も日々できています。書籍を読まないで口語ばかり使用していると、どうしても乱れた言葉使いになってしまいます。本に書いてある言葉はある程度の規格に沿って書かれていることが多ため、口語の乱れを軽減する力があり、正確な日本語を忘れないためにも、漫画でもいいので書籍に触れることは大切であると日々感じています。